その放課後になる前に

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「時間内に来なかったら……ってあったろう?」 「うん。あった」 「そんな制限をしているあたり、真正面から断られる勇気がないんだろうよ。ついでに言うと、告白する勇気もちょっとな。お前が来ることで、告白する勇気を貰えるような状況になるようにしてあるんだから」 受ける気が無いのなら来なければいい。 受ける気があるから来たのだと、そう解釈できるというのが達也の見解だ。 「そうかしら。そんなことは考えずに、素直にひかるさんの心の負担を考えただけなのかも知れませんわよ」 ひかるに告白を受ける気がない場合、それを断ることがひかるにだって負担になる。 それを軽減させるためかも知れないと玲菜は言っているのだ。 「まあ、その可能性もあるんだけどな」 玲菜の言い分も認めつつも、達也は納得した様子ではない。 しかしその事に言及するわけでなく、新たな問いを口にした。 「ひかるに心当たりがなくても、同じ女子のお前らなら何かないか?」 その言葉に、愛流と玲菜は困ったような顔になる。 しかしそれを否定するかのように、すぐに素知らぬ顔を作った。 「あるんだな」 ニヤリと笑う達也。 「な、ないない。私は全然知らないよ」 明後日の方向を向きながらパタパタと手を振る愛流。 その頬は朱に染まり、反らした視線はちらちらとひかるに向かってしまう。 しかしひかるはそんな愛流の様子には気付かない。 愛流はそっとため息をつくと、小さく肩を落とした。 一方の玲菜はスッと視線を反らし、今の質問に答える気が無いことを暗に示す。 「ま、言えないよな。どちらにしろ」 誰かがひかるに好意を寄せていることを知っているのか。 はたまたそれ以外で心当たりがあるのか。 含みを持たせた言い方をした達也は、意地悪そうな笑みを二人に向けた。
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