その一日の始まりに

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「えっ、あ、うん……。いつも通り元気だよ」 男のくせに星座占いを本気で信じて怯えていたことを同級生の女の子に素直に言うのは恥ずかしかったひかるは、多少強引に笑顔をつくって言葉を濁した。 さらには痴漢されたことを思い出し、落ち込んでいたのだ。 情けなさすぎて、言うに言えない。 「ふーん。私はてっきり、朝の占いで乙女座が最下位だったから落ち込んでたのかと思ったんだけど」 「う……」 「それともあれかな。朝から痴漢にあっちゃったとか!」 弾むような声で、楽しそうに愛流は言う。 「痴漢になんかあってないよ!」 今日は、という言葉をぐっと飲み込む。 「それに愛流ちゃん。ぼくは男だよ?」 いささか目付きを鋭くし、非難する。 それに対し、愛流は可愛らしく微笑みながらうなずくと、 「うん、知ってるよ。……で、今日は痴漢には会わなかったんだね。良かった良かった」 そう言ってにこりと笑った。 「…………」 何を言っても無駄らしい。 ひかるはそう解釈し、頬を膨らませながら歩調を速める。 「あっ、ごめんごめん」 まるで悪いと思っていない口調で愛流は謝りながら、ひかるを追った。
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