その一日の始まりに

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二人は噴水を回り込むように越え、校舎に入った。 すると下駄箱の前に、二人の友人でクラスメイトでもある、蕪城達也(カブラギタツヤ)が立っていることに気が付いた。 「達也おはよー」 「達也君、おはよう」 「ああ、おはよう。ひかる、ちょうどいいところに来た」 「ん?」 達也は険しい表情でそう言うと、下駄箱の一つを指差した。 そこはひかるの靴がしまわれている場所だ。 「お前の下駄箱な。――爆弾が仕掛けられてるかもしれん」 「えっ?」 朝からまた馬鹿なことを。 普段のひかるなら、そう言って笑い飛ばしてしまうのだろうが、達也の意外と真剣な瞳を見たせいで、それを言うのをためらった。 代わりに違う言葉を選んだ。 「それ、冗談だよね?」 確認の言葉。 冗談ならたいして面白くない冗談だ。 普段から冗談の多い達也だが、今回は首を振って否定すると、 「いや、真剣と書いてマジと読む」 そう言って眉を寄せた。
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