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「達也君、なんで爆弾が仕掛けられてるなんて思ったの?」
ひかるが達也の言葉に戸惑っている間に、ちゃっかり自分は靴を履き替えた愛流がたずねた。
「それがな、どうもこの下駄箱を誰かが開けた形跡がある」
「はっ?」
それは当たり前だ。
そこはひかるが使用している場所なのだから。
それを指摘する前に愛流が口を開いた。
「ひかるじゃなくて?」
「ああ、ひかるじゃない他の誰かだ」
達也はきっぱりと断言する。
「なんでそれが分かるのさ」
ひかるが問うと、達也は不敵な笑みを浮かべ、自慢げに言った。
「なに、単純なことだ。俺は毎日ひかるの下駄箱に髪の毛をはさんでいた。今朝来たらそれがない。これは間違いなく何者かが開けた証拠だ」
「…………」
「…………」
何をしているんだろう、この馬鹿は。
沈黙にのせた二人の冷めた視線をものともせず、達也は不敵に微笑んだままだ。
「毎日?」
「ああ、毎日だ。入学してから欠かしたことのない、俺の日課だ」
何故か誇らしげに語る小学生時代からの友人を、ひかるは未だに理解出来ない。
いや、ある意味理解していた。
(そういやバカだったっけ)
行動が理解出来ないのはいつものことだ。
それはもう、小学生のころから痛いほど理解していた。
物理的にも。
達也の理解出来ない行動に巻き込まれて作ったケガは数知れず。
ひかるはもう、達也の行動に意味を求めることを諦めていた。
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