風鈴夏

10/12
前へ
/15ページ
次へ
翌日も僕と夢衣は同じように軒先で麦茶をすすっていた。 夢衣が帰省している婆ちゃん家は農家で、昼間は野良仕事に出て婆ちゃんはいない。 無駄に広い部屋は、長い時間の中に取り残さた無人島のようで――僕らの世界の中心だった。 悠久に続くかのような時間。 それが限られた時間なのは僕も夢衣もわかっている。 それが一時の夏の幻であることも。 特別な時間は期限つきの切符のように、日々その瞬間を切り取っていく。 だからこそ僕は、確かな何かを求めていた。 夏休みが終わる前に特別な想い出が欲しかったんだと思う。 僕は禁止された遊びに夢衣を誘う事にした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加