風鈴夏

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風鈴夏

僕らがまだ子供だった時代、その季節は特別な宝ものだった。 彼女が来るのは決まって、日差しの強いこの季節。 夏休み。 風鈴が優しく、彼女の訪れが間近なのを知らせてくれる。 従妹の夢衣(ゅぃ)。 彼女の母親の実家は、僕の住んでる町の近くにある。 僕は決まってこの季節、祖母の家に遊びに通った。 セミの声がうるさい、雑木林の中に祖母の家はあった。 縁側(エンガワ)で麦茶をそそりながら、あどけない素振りでストローをかき回す夢衣がいた。 時折、頭上に吊るされた風鈴がやさしな音を奏でるたび、彼女の長い黒髪が、やわらかく風にそよぐ。 チャリンコを押す僕の姿を見つけた彼女は、途端に笑顔になって僕をむかえてくれた。 そのあどけない笑顔を見るだけで、自然と僕も笑みがこぼれた。 僕と彼女には秘密の遊びがあった。 僕は、彼女をおんぼろ自転車の荷台に乗せると、決まってその場所に向かった。 秘密基地。 山の中腹で見つけた洞穴に、僕はいっぱいの宝ものを集めていた。 僕はそれを彼女に自慢するのが、とっても好きだった。 彼女はいつも僕の自慢のお宝を、物珍しそうに目を輝かせて見てくれた。image=401369689.jpg
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