風鈴夏

3/12
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
翌日、僕はいつものように祖母の家に通った。 雑木林の合間の、ほそうされてないジャリ道をしばらく進むと、打ち捨てられた一基の鳥居が木々の合間から僕を迎えた。 昔、近くに神社があったのかも知れない。 だが今は、その名残とばかりに、この鳥居だけが取り残されていた。 その下をくぐったすぐ先に祖母の家があるはずだ。 僕はペダルをこぐ足に、よりいっそう力を込めた。 地面のジャリをかむ振動が、じかに腰を打ち付けてくる。 僕のお尻は、早馬のように鞭打たれ、祖母の家に急がせた。 林の隙間からカヤブキ屋根の古い軒並みが見えてくると、夢衣の家は間近だ。 なぜか車体が軽くなったように感じた。 僕はよりいっそうペダルに重心をのせる。 それに合わしたように僕の胸も高まった。 雑木林を抜け一気に視界が開けると、眩しく輝く世界が広がった。 古いながらどっしりと構える、祖母の家が出迎えていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!