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夢衣は僕の瞳を見つめ続けた――まるで僕の本心を覗くように。
違う言葉を待つように。
僕は夢衣を抱きしめたいという思いが溢れて、感情が、表情が、隠せない。
彼女を悲しませたくない。
信頼を失いたくない――。
いや違う。
僕が彼女を失うのを恐れるあまり、次に進めないんだ。
堂々巡りの迷路の中で、それでも時間は容赦なく、次の行動を僕に求める。
僕はそっと彼女の肩に両手を置くと、彼女を体から離した。
遠ざかる温もり。
それでも彼女は僕を見上げ、次の言葉を求め続けた。
「夢衣・・・ 」
消えそうなほど細い声。
「あれ持ってる?」
夢衣は黙ってうつむいて、またすぐに僕を見上げる。
それに合わしたように両手に何かを包んで差し出していた。
夢衣の両手に手を重ね、そっとその手を開くと、そこには彼女の手のひらより白い貝殻が、小さな温もりに包まれ収まっていた。
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