エピローグ

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私がホテルで見た老夫婦は、あやなちゃんの実の父母です。 そして、一緒に居た若夫婦。 旦那さんは、けんと君です。 奥さんと娘は、あやなちゃんが亡くなった後に出会い、結婚し生まれました。  あやなちゃんのお母さんは、不倫をして今の旦那さんとの間に赤ちゃんを授かりました。 それがあやなちゃんです。  ところが当時、旦那さんには奥さんが居て同時期に、けんと君と言う男の子が生まれたのです。 旦那さんはあやなちゃんのお母さんのことが好きで、あやなちゃんも目に入れても痛くないほど可愛がりました。 けれど本妻の間に生まれたけんと君もあやなちゃん同様愛して居たのです。 あやなちゃんはあの事故の後外傷による脳性麻痺で短い生涯を終えました。 旦那さんは奥さんと離婚し、けんと君を連れあやなちゃんのお母さんと再婚します。 あやなちゃんが、何故そんなめにあったのか、あの日何があったのかを、随分後になってからけんと君に聞かされ、たまたまあのホテルで脳性麻痺患者を集めてあやなちゃんの追悼式を行った様でした。 あのホテルに医者と看護婦が居たのは、脳性麻痺患者が突然の発作を起こした時に即座に対応出来るように、あらかじめ待機して居たようです。 そして私が打たれたのは鎮静剤。 何もかもがつじつまが合いすぎて居て怖いくらいでした。 夢なのに…。  あやなちゃんとけんと君のお父さんはお金持ちで、あやなちゃんのお母さんのお店は、お父さんがあやなちゃんのお母さんに買い与えたものでした。  その店を無くしたくない一心で、独身を装いお店を繁盛させていたのです。 時には不貞な行為もあったのでしょう。 無くしてからわかる大切なもの。 あやなちゃんのお母さんは便壷に落ち、汚物まみれになったあやなちゃんを自ら便壷に入り助けたのです。 母親じゃなきゃ出来ない行為です。 いや… 母親でも、もしかしたら出来なかったかも知れない。 自ら汚物まみれになるなどと…。 本当は愛していたんです。 でも愛し方が下手だった…。 とても下手だった。 きっとそうだったんです。
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