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次の日。
学校へ行くと、クラスの様子がおかしかった。
いつものいじめっ子達が、けんと君を囲んでいた。
けんと君がいじめられているのだ。
理由は解らない。
でも、けんと君は自分の席に座り、唇をギュッと噛み締め俯いたままで、いじめっ子達にこづかれている。
あやなは、いつも助けてくれるけんと君が、いじめられているのを見て、たまらなくなり、先生に言いに職員室へ走った。
先生が、あやなの話しを聞いて教室に来ると、いじめっ子達はバラバラと散り、そこには相変わらず俯いて唇を噛み締めたけんと君だけが残った。
先生が、どんなに聞いても首を横に振るだけで、けんと君は何も答えなかった。
その日、けんと君は学校で、一言も、誰とも、口をきかず、ずっと俯いたままだった。
その理由が解ったのはその日の放課後だった。
あやなは、今日一日、一言も言葉を発しないけんと君が心配でならなかった。
だから帰りも、家までけんと君に話しかけながら送って行こうと思った。
帰宅途中にある公園まできたら、いじめっ子達がけんと君を待ち伏せしていた。
あやなとけんと君は、ランドセルを掴まれ、公園の一番奥まで引きずられるように連れ込まれた。
そして開口一番。
「お前、昨日誰と山に行ってたんだ!?」
と、一番体格の良いリーダー的存在の男の子が言った。
「お母さんと、おじさん」
あやなが答えた。
「そのおじさんて誰だか知ってんのか!?」
と、挑発するように顔を近づけて来た。
「知らない。でも、いつも一緒にいるおじさんだよ。」
あやながそういうと、いじめっ子は得意げに言った。
「けんとの父ちゃんなんだぜ!!」
その言葉に目を見張る。
あやなはけんと君を見た。
彼は何も言わず俯いたままだ。
「そんなハズ無いよ!!」
と力いっぱい否定する。
「俺見たんだ。けんとの父ちゃんお前の母ちゃんとデキてんだぜ!!」
ショックだった。
余りの事に言葉も出なかった。
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