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次に目が覚めたとき辺りは既に暗くなっていた。
頭がズキズキする。
でも、帰らなきゃお母さんに怒られる。
お母さんに捨てられる。
頭の痛みより、お母さんに見捨てられる事の方があやなにはずっとずっと痛かった。
あやなが何処か痛いとか、具合が悪いと言うと母は怒るのだ。
だからあやなはいつも我慢する。
痛くても我慢する。
それが当たり前、いや…お母さんに嫌われないために絶対必要だったから。
その日、仕事が終わらなかったのか、家には誰も居なかった。
あやなは血だらけの顔を流しで洗い布団に潜った。
そして痛みに堪えながら眠った。
翌朝。
目が覚めたが、家には誰も居なかった。
鏡で見るあやなの顔は腫れ上がりお化けのような顔だ。
頭の痛みは昨日より酷かった。
学校を休んだ。
次の日も…その次の日も…母は帰宅したのかしていないのか…あやなはずっと眠りつづけた。
数日たったある日、あやなが外にいると、母とおじさんが大きな買物袋を下げて帰宅して来た。
おじさんは、ポンとあやなの頭に手を置くと
「アイス買ってきたから一緒に食べような。」と笑った。
その時始めてみょうな事に気がついた。
おもらししている…。
しかも便と尿を一度に…。
足も片方言うことをきかない。
「お母さん…私ウンチしちゃった…おしっこも…」
母は嫌そうな顔をしたが怒らなかった。
おじさんがいるときはいつも怒らない。
「早くトイレに行きなさい…」そういいながらブーツを脱いでいる。
「うん」
あやなの家は汲み取り式のボットントイレだ。
そのあと、トイレまで行ったのは覚えているが、何があったのかはわからない。
次に見た時は、汚物まみれになったあやなを抱き抱える母と、それを取り囲むいじめっ子達。
母は必死にあやなの名前を呼ぶ。
「あー!金づるだ!!金づるがゲロくそまみれだ~!」と言ういじめっ子の声が聞こえた。
「そうよ!!だからなに!!」母の半狂乱の声がけたたましく響く。
救急車と隊員が見える。
タンカーにのせるべくあやなを担ぎあげる。
その時、吐き気を催しタンカーに大量に吐く。
救急隊員は、落ち着いた様子で吐瀉物をタンカーから払い落とし、タオルを敷いて、あやなを乗せて走り出した。
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