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「何が怖い」 薪の弾ぜる音。翻る陣幕。新月でもないのに暗い、くらい夜闇。 「何ぞ、怖いことなどない」 ゆうるりと、武骨な手には小さく見える盃を揺らし、相対した男は笑む。盃に写らぬ月を飲み干し、目を、男に 「俺は怖ぇ。死ぬのが怖ぇ。下の奴等が死ぬのが怖ぇ。俺を立てた民が、死ぬのが怖ぇ」 「そんなもの_ 「怖くねぇのか」 遮る声は鋭く、しかし顔は笑んだままだった。 「民を守る為に戦うのだ。その為に死するなら、家臣共々本望だろう」 正論だな。呟くように言って盃を煽る。 風が、吹いてきた。 「怖ぇんだろ」 ぽつり、と突き刺すように
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