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『これから、皆さんには、三回戦を戦っていただきます』
《ケイ》の声は、相変わらずボイスチェンジャーを介したものであり、モニターに映る姿も、影になっているが、今までと変わる処は無いようである。
(《ケイ》が、選手に紛れていると考えるのは……やはり、無理があると……?否、まだ、わからない……)
《院生》は、そう思いながら、自分の左に並ぶ者達に意識を払っている。
『このタイミングで、選手の皆さんに集まっていただいたのは、予定外のことです』
「予定外とは、どうしたことですか?」
《スカー》が、質問をする。
『はい。それは、ここに残ったのが、7名であることが原因です』
(……やはりな)
《ライター》が、眉をひそめる。
『御存じの様に……二回戦第七試合に於いて、両者死亡となりました。よって、三回戦の四つの試合を行うことが叶いません……』
「そんなのは、十分に想定されたことだと思うが?」
《院生》が、反感を露に口を開いた。
『……確に』
《ケイ》の声が、一瞬、低くなったようだ。
『……しかし、この場合は、戦わずして三回戦を勝ち抜ける選手を公平に決定すべきだと考えます』
「歯痒いね……。俺が不戦勝になるのが、気に入らないって、はっきり言えば?」
《ライター》が言う。
『そうではない』
再び《ケイ》の口調に、変化があった。
『……これは、あくまで大会の規定によるものです』
《ケイ》が、すぐに冷静な口調に戻して続ける。
「こんな大会に規定とは……ね。で?どうするの?」
《ライター》が聞く。
『……クジを用意しました。当たりを引いた選手が、不戦勝……その対戦予定だった選手が、三回戦の第四試合……つまり《ライター》さんの相手となります』
「成程ね……。じゃあ、《ライター》さんが当たりを引いた場合は、そのまま不戦勝って訳だね」
《白面》が、納得したように話した。
『それは、少し違います。クジは、四枚……引くことの出来るのは《スカー》《白髪》《黒髪》《白面》の4名に限ります……』
「やれやれ……公平が聞いて呆れるよ……」
《ライター》が、小声で呟いた……。
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