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『──(音声)Aには殺傷力の高い武器が、Bには身を衛るための道具が入っています。Cは不確定──強力な武器である場合も、まったくハズレの場合もあります。そして──今はまだパネルを開くことは出来ません。【トークタイム】が終了してから、15秒間──【チョイスタイム】にのみ、一つのパネルを開くことが許さるのです』
試合会場──トークタイムのカウントダウンが、60秒を切っていた。
「──人を殺すなんて、出来ないよ」
「でも、《パパ》さん、家族いるんでしょ? 生きて帰りたいよね?」
「それは……」
俯く《パパ》をジッと見る《キャバ嬢》が──何かを決意したように、表情を引き締めた。
「私、決めたわ」
「な……何を?」
「私が──死ぬって──」
「! そ、そんな……君だって家族はあるだろう? 僕は、君を殺せないよ」
「大丈夫──私、自分で死ぬから」
「エッ──?」
唖然と見つめる《パパ》に──《キャバ嬢》がニコッと微笑んだ。
「──私は、ずっと一人だった。流される様に、生きてはきたけど……ホント、最低の人生だったと思う。……だからね、せめて最後に……」
《キャバ嬢》は、真剣な表情で語りながら、その頬を涙が伝ってゆく──。
「貴方と貴方の家族の為に死なせて……それを、私の生きた証しにしたいの」
「…………」
言葉を無くした《パパ》は、茫然と《キャバ嬢》を見ていた──そして、
──カウントが[0]になり、トークタイムが終了する。
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