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『選ばれた皆さん、おめでとうございます』
巨大モニターに、映し出された何者かが、話し始める──。
その人物は、影を落としていて、その表情は確認出来ない──が、何処と無く、紳士といった佇まいを感じさせていた。
顔にはサングラス、声はボイスチェンジャーで変えられている。
「何に……選ばれたと言うんだ?」
小さなモニターの一つ(゛No.08゛と表示のある)の若い男が、そう聞いた。
『そうですね──差し当たっては、この素晴らしい大会の選手として、皆さんは選ばれた──そう思っていただきたい』
モニターの人達は、それぞれが今現在の──『リアル』が映し出されている様だ。
それぞれが、サングラスの男の言葉に対して、反応を見せている。
また、互いの音声を通じて、会話することも可能になっているようだった。
『参加者は現在、試合会場に待機した、お二人を含めた32名──その中で、トーナメントを勝ち上がった一名が優勝となり、賞金10億円が贈られます』
それを聞き──
モニターの中で、人々が騒めいた──。
「試合っ言うがよぉ。一体、何をするってんだい?」
゛No.25゛の老人が聞く。
「いきなり連れて来られて、大会だの、10億だのと──詳しく説明してくれねぇか」
『なに──簡単なことですよ……』
男の口許が、ニヤッと笑う。
『これから皆さんは、一対一で殺し合いをするのです』
「こっ……殺し合い!?」
『そうです──まあ、驚かれるのは無理もありませんね。理解し難いことでしょう』
「当然でしょ!」
「まったく、何の冗談だよ!」
「そ、そんなこと……どう信じろと言うんだ!」
口々に不満を訴える、モニターの中の参加者達──
『わかりました。皆さんのおっしゃることはごもっともです。それでは実際に第一試合を、御覧いただきましょう。私が詳しいルールを説明いたします』
「…………」
一同の表情に、緊張が走る。
『そして、理解するでしょう。もう、引き返すことが許されない──その現実をね』
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