選手控室゛No.08゛

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狭い通路──その両側には短い間隔でドアが並んでいる。 各ドアの脇には、黒いスーツの屈強そう男達が立ち尽す。 それぞれのドアには゛No.01゛~゛No.32゛の番号のプレートがかけられている──。 その内の一室……゛No.08゛の狭い室内…… 若く凛々しい顔付きの男が、椅子に座り目の前にパソコンの画面を食い入る様に見入っていた──。 その両手は、特殊な器具で拘束されている。 ──何故こんなことに、なったのか? 男は、数時間前の出来事思い出していた……。     ※ ※ ※ 男はバイトを終え、帰路についていた──。 一人で夜道を歩いていると──走って来た黒い車が、男の前で停車する。 ──と中から、身なりの良いスーツを纏った男達が、降りてきた。 その男達は言った── 「あなたは選ばれました」とか「大変な名誉です」等と──。 スーツの男達は、何かと持て囃し、車に乗せようと誘っているらしい……。 言葉の端々には「大会」や「賞金」といったキーワードが挟まれていたことが印象的だった──。 カメラを回して撮影してる男もいたので、一瞬、テレビ番組か何かと考える。 ──が、怪しく思い、頑なに断っていた。 すると── その中の一人が、ポケットからハンカチの様な物を出して、顔に近付ける──。 「うっ──!?」 男の記憶は、そこで途切れ──次に気がついた時には、この部屋に居たのである──。 その後──カメラを向けられ、何かコメントを求められたが、何のことかサッパリ理解出来なかった。 具体的な説明が無いことに、やたらと腹が立っていたことを覚えている。 そして──今に至っていた。     ※ ※ ※ ゛No.08゛の男は、しきりにパソコンを操作する。 画面は、試合会場のいくつかの視点に切り替えることが可能のようだ。 拘束された両手で不自由そうに操作する──が、急に画面切り替わり── 再び、サングラスの男の顔を映し出した。 『それでは一回戦第一試合開始です。なお、試合会場のお二人には、予め……ルールを説明してあります』
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