13人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「ひかるちゃん、一緒に帰ろうよ!!」
放課後を告げるチャイムの音が鳴り止んだばかりの学校の廊下に少女の声が響き渡る。
下駄箱に向かって歩き始めていたひかるは少女の声に気付くと足を止めて振り返った。
「あ、愛流(あいる)ちゃん!!」
ひかるは廊下の向こう側から駆け寄ってくる少女に向かって大きく手を振った。
「ひかる、一緒に帰ろうよ!!」
愛流と呼ばれた少女はひかるの元に駆け寄ると、満面の笑みを浮かべた。
「え?だって、愛流ちゃん部活があるでしょ?」
ひかるはテニス部に所属しているが、この学校のテニス部は練習が厳しいことでも噂なのであった。
平日に練習がないなんてありえない。
すると、愛流はひかるに顔をぐっと近づけると、ニヤリと笑った。
「この前の日曜日は試合で疲れたから今日は特別休養日なのだ!!」
愛流は得意げに右手でⅤサインを作った。
「要するにサボりなんだね・・・・・・」
ひかるは呆れた顔で首を振った。
愛流はいつもそうだ。
ひかるは気楽な愛流の性格がうらやましく思えた。
「失礼な!私がせっかく親友と一緒に帰るために部活を投げ出したというのに・・・・・・」
そう言うと愛流は顔を手で覆いながら大声で泣き出した。
いや、正確に言うと泣き真似をしだしたのだ。
「はいはい、わかったよ。一緒に帰ろう」
ひかるがそう言った瞬間、愛流は突然泣き止むと、その場で飛び跳ねた。
「やった!!さあ、帰るぞ!!さあ、行こう、行こう!!」
愛流はひかるの手を引くと、下駄箱に向かって足早に歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!