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「ねえ、今度一緒に映画に行かない?」
下校途中の道を歩きながら愛流はひかるに問いかけた。
「映画?映画って私行った事ないな・・・・・・で、何を見るの?」
ひかるは道に落ちている石ころを蹴飛ばしながら愛流の顔を覗き込んだ。
愛流はニヤリと笑うとカバンの中から映画のチケットを取り出すと、得意げにひかるの目の前に突き出した。
「これを見ろ!お父さんがゲットしてきてくれたのだ!!」
ひかるがそのチケットを見ると、今話題の恋愛映画のタイトルが書かれているのがわかった。
ひかるはチケットを手に取ると不思議そうな顔で愛流の顔を見た。
「愛流ちゃん、こんなの見るんだ。恋愛映画ってなんか大人な感じだね」
ひかるは生まれてこの方、恋愛というものに全く触れたことが無い。
そのため、この手の映画には少し抵抗があった。
「これだから、ひかるはお子ちゃまだからしょうがない。中学生たるもの恋愛の一つや二つ経験しなくては」
愛流は口元に手を当てると高飛車な笑いをしてみせる。
恋愛かぁ・・・・・・
病院で長いこと暮らしていたひかるにとっては恋愛など夢のまた夢の話である。
ひかるは少しうつむくと考え込んだが、恋愛経験値ゼロのひかるには到底考えが及ばなかった。
「私にはまだ早いかな。私の恋人は空だけで十分だよ」
ひかるが呟いたのを愛流は聞き逃さなかった。
「だから!ひかるはダメなの。好きな人がいたら当たって砕けろ!!ダメもとだよ!!」
愛流はそう言うとひかるに詰め寄った。
「苦しいよ。愛流ちゃん!でも、それなら愛流ちゃんも好きな人と映画に行けばいいのに・・・・・・」
その瞬間、愛流の動きが止まった。
「と、ともかく!!次の日曜日ね!!絶対だよ!じゃあ、私はこっちだから、またね」
そういい残すと愛流は手を振りながら走り去っていった。
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