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少女が閉じ込められた部屋の中は、暖房が機能しており、心地良い環境に温度に整えられていた。
「……あなたは誰? 何の用?
見張りをどうしたの?」
金髪の少女は驚いた様子で言う。
よく見てみるとその少女はかなり幼い。
年齢で言えば10歳前後だろう。
ブロンドの髪に青い瞳。
まるで人形のようだ。
しかし、全てを悲観したかのような表情がその風貌に大きく影を落としている。
「俺はサンダー。
別に怪しいもんじゃあない。
見張りにはちょいと眠って貰った」
「怪しいわ。
あたしをどうするつもり?」
「怪しいか、まぁそうだろうな。
ちょっと嬢ちゃんが特別な力を持ってるって聞いたもんでな。
その力を悪い奴が利用しに来るって話を聞いて、助けに来たのさ」
サンダーはおどけたように肩をすくめて質問に答える。
少女はその答えに顔を落として自分の膝元を見つめる。
「特別な力、か……
こんなものがあるから……」
まだまだ幼い少女ではあるが、能力を持っているが為にこれまで普通の生活を送ることが出来なかったのであろう、膝の上で握りしめた拳が小さく震えている。
「嬢ちゃん、俺は君を助けたいと思ってる。
このままここに居たら利用されるだけだ。
俺が連れ出してやる。
逃げないか?」
サンダーが言う。
しかし少女はうつむいたまま、拳を固く握りしめて何も答えようとはしない。
「コーヒーだ。飲むかい?」
片手の紙コップを差し出す。
「嬢ちゃんの力は液体を変化させる力だと聞いた。
良かったらそいつを見せてくれないか?」
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