ノースダコタ

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  麦の香りが強いバンズと、マスタードのほのかな甘味が鶏肉によく合う。 フィッシュフライとポテトにも同じマスタードソースが添えられており、サンダーはあっと言う間にそれらを平らげてしまった。 「マスター、こいつはいけるな。 この味なら俺の故郷じゃ間違いなく一番の人気店になれるよ」 おしぼりで指と口元を拭き、またチビチビとグラスを傾ける。 「ありがとうございます」 「……ところで、こいつは世間話なんだが、マスターの出身は中東のほうかい?」 サンダーは大した意味もなく問いかける。 言葉通り世間話である。 「ええ、両親がカルカッタの出身です。 私はスコットランドで育ちましたが」 「そうか、スコットランド仕込みの味なんだな」 サンダーが相づちを打つ。 「この顔とミルキーム・チャーイなんて名前のおかげでこの町では少々目立ってしまいますがね」 チャーイははにかんだ笑みを見せる。 「ところで私からも世間話があるんですがね、大陸指名手配中のあなたがなぜこの町にいらしたんです?」  
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