ノースダコタ

29/54
前へ
/68ページ
次へ
  少女はようやく顔を上げたものの、紙コップを見つめたまま手に取ろうとはしない。 「あなたもあたしのこの能力を利用したいんでしょ?」 少女が小さく手を振ると、紙コップの中身が見る間に煮えたぎり、ボコボコと沸騰し始める。 「……。 やはり、そうか」 サンダーはゆっくりとコップを床に下ろす。 「色々と辛い目に遭ったのかい? 俺が君くらいの年の頃は、兄弟でバカやって遊んでいたよ。 本当は君もそんな生活に憧れているんだろうな」 「同情なんかいらないわ。 あなたにあたしの気持ちはわからない!」 少女が大きな声を上げ、立ち上がる。 ビキビキと音を立てて今度はコーヒーが凍りつき、茶色の氷柱が出来上がる。 「……まだ子供なのに凄い力だな。 だが━━ サンダーは紙コップに向けて指を銃のように構える。 ━━俺も能力者だ」 指先から青白い稲妻が走る。 稲妻に打たれた茶色の塊は瞬時に溶けて元の液体に戻る。 「辛い目に遭ってきたのは君だけじゃない」  
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加