96人が本棚に入れています
本棚に追加
少女はようやく顔を上げたものの、紙コップを見つめたまま手に取ろうとはしない。
「あなたもあたしのこの能力を利用したいんでしょ?」
少女が小さく手を振ると、紙コップの中身が見る間に煮えたぎり、ボコボコと沸騰し始める。
「……。
やはり、そうか」
サンダーはゆっくりとコップを床に下ろす。
「色々と辛い目に遭ったのかい?
俺が君くらいの年の頃は、兄弟でバカやって遊んでいたよ。
本当は君もそんな生活に憧れているんだろうな」
「同情なんかいらないわ。
あなたにあたしの気持ちはわからない!」
少女が大きな声を上げ、立ち上がる。
ビキビキと音を立てて今度はコーヒーが凍りつき、茶色の氷柱が出来上がる。
「……まだ子供なのに凄い力だな。
だが━━
サンダーは紙コップに向けて指を銃のように構える。
━━俺も能力者だ」
指先から青白い稲妻が走る。
稲妻に打たれた茶色の塊は瞬時に溶けて元の液体に戻る。
「辛い目に遭ってきたのは君だけじゃない」
最初のコメントを投稿しよう!