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酷使した両腕にけだるさが残るが、なんとか無事隣のビルへと飛び移ることが出来た。
「さてと、トンズラさせていただきますかね」
男は呟き駆け出す。
元居たビルではようやく追手が屋上の端に到達していた。
何か喚きながら男の方に銃を向けているが、強い風の唸りでその声は聞こえない。
「お前ら、ご苦労サン!!」
男は背を向けたまま大声で叫ぶと、小さく手を振る。
と、その時。
キュイン。
男の足元に火花が散る。
狙撃だ。
瞬時に身を翻し配電装置の陰に隠れる。
そっと周囲を見渡すと、もう2軒隣のビルに狙撃手が居る。
黒づくめの男が2人。
狙撃手はこちらに黒い筒を向けたまま微動だにしない。
もう1人の観測手はゴーグルを覗き込んでいる。
足元を狙ったと言うことは恐らくは殺傷目的ではなく足止めが目的。
殺すつもりなら先程屋上のへりにぶら下がっていた時に狙えば、もっと簡単だったはずだ。
「ジョーンズの野郎、あくまで俺を生け捕りにするつもりか」
男は苦い顔で呟いた。
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