ノースダコタ

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  一陣の風が吹き、霧が晴れる。 そこには、鋼鉄化を解除したサンダーが真っ直ぐに立っていた。 「サンダー、力尽きたんじゃなかったのか!」 「てめーの鉄屑みたいな脳ミソじゃあ分からねえかもしれねえが、電気分解と電気伝導ってもんがあんだよ」 電解質溶液として食塩水。 そこに電極を二つ。 その片方――カノンの身体――は帯電している状態。 そこでもう一方の電極――サンダーの身体――から電圧をかければ…… カノンの身体に帯電した電子が食塩水に溶け出し、陽極の役目となるサンダーの身体に電子が集まる。 「カノン、お前のエネルギー、全部貰うぜ」 「貴様、何をする、やめ……」 サンダーが身体がら発する電圧をさらに上げる。 二人の足元で食塩水がブクブクと泡を立てる。 カノンがサンダーに攻撃しようと足を上げるが、身体がうまく動かない。 それもそのはず、カノンの身体の表面に、多数の錆が浮かび上がってきている。 「お前の身体は今酸化し続けている。 そのエネルギーが電気として俺の身体に集まって来てるんだ。 自らの鋼鉄化を解除しろ。 さもないと、本当の鉄屑になっちまうぞ?」 「な、な……」 カノンは抵抗を試みるが赤茶色の錆に包まれた肉体は言うことを聞かない。 ついにはガシャンと音を立てて水溜りの中へと倒れ込む。 「これで終わりだ……」 倒れたカノンの頭に手をかざす。 サンダーの手のひらから放たれた稲妻がその頭を貫き、煙が上がる。 食塩水がビリビリとその電気を拡散させ、散っていく。 「……終わった……」 サンダーはガクリと膝をついた。 少女が駆け寄ってくる足音が聞こえる。 ああ、この子のおかげだ。 この子がいなかったら俺は……  
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