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「ふぅ~む。
年貢の納め時って奴かい?」
サンダーはうつむいて息を吐き、周囲を見渡す。
このビルから更に他のビルへ飛び移るには距離があり過ぎる。
かといって、取り囲まれたこの状況では強行突破は難しいだろう。
空を飛ぶことが出来れば逃げることが出来るだろうか。
数百メートル離れたところに駅が見える。
追手をまいて電車に乗ることが出来れば……
「観念しろ、サンダー。
お前の家族の為にもな」
保安官が言う。
サンダーはその言葉に表情を曇らせる。
「わかったよ、ただし、家族のことは二度と言うんじゃねえ」
静かにそう言い、しゃがみ込むサンダー。
保安官に安堵の色が浮かぶ。
が、次の瞬間、サンダーは右手に何か黒いものを持って立ち上がった。
「なぁ~んてな!
俺は家族の為にも捕まるわけにゃあいかねえんだよ!!」
そう叫ぶと踵を返して走りだす。
全速力で走ればなんとかなる。
あそこまでの距離はわずかだ!
サンダーは遥か彼方を見据えて走る。
そう、ここで捕まるわけにはいかない。
その想いだけがサンダーを突き動かしていた。
フルスピードのまま屋上を駆け、そのまま空中へと飛び出す。
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