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「サンダー!!!」
背後から保安官の声が聞こえるが、今はそれどころではない。
アレを掴めなければ一巻の終わりだ。
サンダーは右手の何かを振り上げた。
その何かが黒い綱のようなものに触れる。
身体が弾かれそうな衝撃が右腕を走り、即座にもう一方の腕で何かを掴む。
左右の手でしっかりと握ったそれは、黒い綱の上を滑り始める。
それは革靴だった。
しゃがみ込んだ一瞬に保安官の隙をついて革靴を脱ぎ、それを右手に握っていたのだ。
そして、屋上から飛び出したサンダーは、革靴を滑車代わりにビルから伸びる特殊な電線を凄い勢いで滑り降りていく。
みるみるうちにサンダーの姿が小さくなっていく。
「あー!! 撃つな!撃つな!
あいつを撃ち殺してはならん!!!」
フッケン・ショー・ジョーンズ大陸保安官は怒鳴り声を上げた。
……これでまたやり直しだ。
いつも土壇場でやつの機転に出し抜かれる。
「来い!! やつは駅に行くだろう。
足取りを見失う訳にはいかん!!」
溜息をついている暇はない。
ジョーンズは、部下達を引き連れ、屋上のドアへと向かって歩き出した。
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