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「樹、ありがとう」
「僕は何もしてませんよ。それより、本当のところ、具合はどうなんですか?」
「ノド痛いけど、点滴してもらったら少し楽になった。そういえば、単さんが点滴刺してったけど…」
僕の言葉に、樹は不思議そうな顔をした。
「あ、そうか。あなたは単が医者だった事を知らないんですね。彼は、内科医をしていたんです」
ああ、なるほど。そうだったんだ。
「点滴、痛くなかったでしょう。あの人、上手いんですよ」
「うん。あ、そういえばユウキ君は?」
「フランスに帰りましたよ。駅まで送らなくてはならなくて、来るのが遅くなってしまいました」
樹は申し訳なさそうな様子だ。
だから言ってやった。
「来てくれて嬉しかったよ」
そうしたら、樹はすごく嬉しそうに笑ったんだ。
「それにしてもさ、楽しそうに話してたよね」
だから、樹をからかってやった。
「あれは営業スマイルなんですよ」
樹はぱちっとウインクした。
…彼の方が僕よりずっと上手なようだ。
雨はいつの間にか上がって、窓の外には青空が広がっていた。
…ちなみに、樹は3日後に熱を出して寝込んだんだけど、それは僕のせいじゃない。
…多分。
だって、帰り際にすんごく濃厚なキスをしてったのは樹の方なんだから。
終
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