4人が本棚に入れています
本棚に追加
――時は数年流れ、凛はいつものように、とある政治家秘書の暗殺へと繰り出していた。
「え~っと。今回は護衛ごと殺っちゃっていいんだったっけ」
跳躍力だけではなく、その腕力も尋常ではない凛にとって、普通のボディーガードの息の根を止める事など赤子の手を捻るよりたやすい。
だが、今回だけは違っていた。
あくまでも相手が『普通の』ボディーガードだった場合である。
「え? しゅ……う?」
標的の護衛として立ちはだかった人物は、幼い頃からともに生きて来た戦友であった。
「凛……どうやらそういう事みたいだ」
時を同じくして、本部でモニターを眺める男が二人いた。
「ボス……良かったんですか? あの二人」
するとボスは眉ひとつ動かさずに言う。
「制御しきれなくなった獣はお偉いさん達も怖いという訳だ。
『共食いさせろ』だとよ……まぁ、新しい被験体はもう完成に近付きつつあるしな」
数時間後。
人知れず地面に転がった二つの亡骸は、誰の目に触れる事なく処理される。
二つの死を嘆く者もいない。
それでも世界は回っていく。
最初のコメントを投稿しよう!