視えなければ楽なのに

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霧のせいでよくは見えないが、煙草の火と低い声があの人だと決定づける。 「おぉ。」 瑞穂の声で俺達に気付いたカズ兄がこちらを見る。 瑞穂は走ってカズ兄の側に駆け寄ると抱き付いた。 ―ズキッ 胸の辺りが痛んだ。 ここの近所の奴等は全員知っている。 瑞穂とカズ兄が… 付き合っている事くらい。 ―カズ兄は俺と瑞穂、それからここらに住んでる幼馴染み3人の兄ちゃん的存在。 昔から遊んでもらったり、勉強みてもらったりしてた。 頭も良くて運動神経も良くて、おまけに顔もいい。 俺はいま15で、カズ兄は21歳。 あとの奴等は瑞穂を含めてみんな17歳だった。 何度…自分の生まれの遅さを憎んだ事か。 1人だけ、いつだって置いていかれてた。 しまいには 憧れの人に好きな女を持っていかれた。 俺とカズ兄じゃレベルが違いすぎて、恨む事すら出来なかったけど。
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