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なんで…言ってしまったんだろう。
言わなければ。
まだ浅い夢の中で…
幸せな日常を過ごしていられたのに。
霧と…しんしんと静かに積もってゆく雪が
俺の視界を遮って
2人の姿をかき消して…
「ぅ…ぅあぁ…ア゛アァァァァァ!!」
ぷつんと…
何かが弾けた。
気が付いたら走っていて…
白い白い雪に…
俺1人の足跡がついてゆく。
「ちょ…拓斗!?」
焦る瑞穂とカズ兄の声なんか聞こえない。
何も…何もかも見えなければ。
そうしたら楽なのに。
霧に紛れて瑞穂も…
瑞穂を好きな自分さえも消して、見えなくなってしまえば。
2人の…
瑞穂のカズ兄に向ける笑顔が脳裏に焼き付いて消えない。
刻印を押されたように残って…
それはまるで終焉の無い悪夢。
俺をどんどん追い詰めて。
あぁ俺。
こんなにもアイツの事好きだったんだ…
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