視えなければ楽なのに

7/8
前へ
/26ページ
次へ
なんで…言ってしまったんだろう。 言わなければ。 まだ浅い夢の中で… 幸せな日常を過ごしていられたのに。 霧と…しんしんと静かに積もってゆく雪が 俺の視界を遮って 2人の姿をかき消して… 「ぅ…ぅあぁ…ア゛アァァァァァ!!」 ぷつんと… 何かが弾けた。 気が付いたら走っていて… 白い白い雪に… 俺1人の足跡がついてゆく。 「ちょ…拓斗!?」 焦る瑞穂とカズ兄の声なんか聞こえない。 何も…何もかも見えなければ。 そうしたら楽なのに。 霧に紛れて瑞穂も… 瑞穂を好きな自分さえも消して、見えなくなってしまえば。 2人の… 瑞穂のカズ兄に向ける笑顔が脳裏に焼き付いて消えない。 刻印を押されたように残って… それはまるで終焉の無い悪夢。 俺をどんどん追い詰めて。 あぁ俺。 こんなにもアイツの事好きだったんだ…
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加