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―ザァーと降り続く雨は、まるで私の代わりに涙を流しているようだった…
灰色の空が。
一面に広がっていて、私の虚ろな瞳を更に曇らせていた。
上を向けば雨が私の身体を濡らして、それが私の体温を徐々に奪っていくのを感じる。
悲しいのに…
苦しいのに…
泣けなくて。
ただ心にあるのは、ぽっかりと空いてしまった穴の違和感と
「…ウソツキ」
という、彼に対する呆れの思いだけだった。
どのくらい雨の中を立っていたんだろう。
時間の感覚さえも鈍ってしまった。
スッ―
空を仰ぎ見ていたら、ふと空が夜の様に一面黒くなった。
いや…それだけじゃない。
頬を濡らしていた雨粒が降って来ない。
それが傘なのだと理解するまでに、今の私は時間を要した。
「どうしたの?風邪をひいてしまうよ?」
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