悔しいから言ってやらない

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―カラン…コロン  …カラン…コロン― 沢山の人の声と共に、下駄の綺麗な音が聞こえる。 ―季節は夏。 今日は近所でも有名な大きい神社での祭りの日だ。 毎年家の用事やなんかに巻き込まれてつまらなく終わっていたこの日だが、今年は違う。 それは、兄に今年は友達と出かけても良いとの許可が降りたためである。 うちが営んでいる食堂はこの神社のすぐ近く。 味も悪くはないので祭りの日は食事にくる客が多いのだ。 ちなみに、兄が作るオムライスは中々の人気である。 毎年毎年5つ上の兄にこき使われていた忌々しい日でもあったのだが… あの恐ろしい兄が俺に金までくれて 「"友達"と遊んでこい」 と言ったのである。 この際、友達の部分を強調されたのには触れない。 気にしたらダメなのだ、と俺の直感が告げているからだ。 何にせよ! この休みを無駄には出来ない。 いつも忙しくて中々出かけられない分、今日はたくさん楽しまなければならないというものだ。 (とりあえずは…兄貴に感謝しねぇとな…) チラリ、と隣りで歩くやつの顔を見た。
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