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「そういえば…名前をまだきいてなかったよね」
ふと思い出したらしく、彼は
「俺、佐伯 涼って言います」
にこやかに名乗った。
…どこかで聞いた事あるような名前だなぁ
そう思って記憶の中を彷徨ってみるのだが。
君は?と言いたげな目で見つめられたので私も名乗る。
「築島…築島 椿です」
「椿ちゃん…かぁ
―綺麗な名前だね」
佐伯さんがサラッとそんなことを言ってのけるので、私は赤面してしまった。
「そ…んなことないですから!!」
カウンターのテーブルをバンッと思い切り叩いて立ち上がる。
佐伯さんはぎょっとして一歩下がった。
そんなことよりも。
「…どうして。私に声をかけたんですか?」
…不思議だった。
12月にもなってあんな雨の中ただ突っ立っている女子高生に、声をかけてくる奴なんて身体目的のナンパ男か中年だけだろう。
こんな見るからに優男の佐伯さんが、いったい…何故?
うーん
と考えるように顎に手を当てると、佐伯さんは
「
…綺麗だったから、かな」
と照れたように頭を掻いた。
「ただ遠くの空をみつめて涙を流す君を…とても、とても愛しいと思ったから…」
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