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「そっか…それは…
苦しかったね」
ふわりと、頭を撫でられた。
「…うん」
ありきたりな言葉だけど。
決して私を総て理解してくれた言葉ではないだろうけれど。
―たくさんの涙が流れた。
上手く感情を表せない私は、理解されることが少ない。
そんな自分を諦めてもいた。
…けれど。
この人だけは、温かく包みこんでくれそうな気がした。
…長いことひたすら泣いていたと思う。
ぐしゅぐしゅになった顔を見て、佐伯さんがティッシュを渡してくれる。
恥ずかしげもなく大きく鼻をかむと、楽しそうににっこり彼は笑った。
「本当はね、もうひとつ声をかけた理由があるんだ」
「…何ですか?その理由って」
泣き疲れてガラガラになった声で問い掛ける。
「俺の弟と…同じ学校なんだよね、椿ちゃん」
「え…」
驚いた。
ここでさっきの『聞いた事あるような』というのも納得がいく。
さえき…サエキ…
…佐伯??
「もしかして…佐伯 翔?弟の名前」
「あ、うん!そうだよ。知ってた?」
更に驚いた。
「…お、同じクラス」
「えっ!?」
いやぁ~…すごい偶然だね
なんて佐伯さんは笑った。
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