視えなければ楽なのに

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―しんしんと 降り積もる雪が… 全てを白く 飲み込んでゆく…― 「…瑞穂。」 「ん?」 少し前を歩く君に声をかけると、君は優しく微笑んだ。 「なんでもねェ…」 その笑顔があまりにも綺麗だったから、俺はそう言って視線を外す。 ―1月… 天気は曇り。 朝から濃い霧が辺りを包みこんでいて、視界があまりよくない日だった。 オマケに気温がとても低い。 凍えてしまいそうだ。 ―突然だが、俺の名前は広瀬 拓斗。 この女…若林 瑞穂に恋をしている。 ただの幼馴染みから好きな人になるまで、どのくらいの時間を要しただろうか。 だいぶ…遠回りをしてしまった気がする。 「え~…気になるんですけどぉ」 「…別に。お前の顔が何時にもましてブサイクだと思っただけ」 咄嗟に…嘘をついた。
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