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庭にある大きな池の周辺は雑草が生え散らかり、家の縁側からの眺めを害していた。
僕は昇りはじめた月が映る池の前に立ち、右手に力を込める。
瞬時に右手は発火し、オレンジ色の炎が闇夜の中で綺麗に光りながら右手を包み込む。
まずは池に映る月目掛けて、でこぴんの要領で右手人差し指を弾く。
小さな炎の固まりが素早く飛んで行き、じゅっと音を起てて消えた。
右手に集めた力を抜いて炎を消し、次に手押し式の草刈り機を持ってくる。
今度は扱いが難しい。
慎重に力をコントロールして、炎を草刈り機の刃の部分にだけ纏わせる。
どうやら成功したようで、草刈り機を押すと草を焼きながら切っていく。
その効率の良さで雑草はすぐに全て刈り終えた。
庭は綺麗になったし、術の訓練にはなるし、小遣いも貰えて一石二鳥どころか三鳥である。
縁側に戻って履いていた下駄を脱いできちんと揃え治したら、何故か仕事用の黒いスーツを着た父さんが立っていた。
今日は仕事が無いはずなのに。
「翔。話があるから大座敷にいなさい」
それだけ言うと父さんは大座敷と全く反対の方向に歩いていった。
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