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座敷だから当然全面畳み張りで、人なら100人くらいは簡単に入ってしまう程広いのが、日野口家の大座敷。
これ程までに広い部屋の真ん中で、正座をしている僕。
夏ならともかく、まだ冬の寒さが抜け切らないこの時分に、こんなところで待たせるとは、父さんも鬼畜だ。
後であったかいお茶でも貰おう。
「待たせたな、翔」
本当だよ、と言いたかったが我慢してその言葉を飲み込んだ。
父さんはそんな僕の様子に気づいているのか分からないが、ゆっくりと僕の目の前に正座し、僕の顔を見つめる。
「翔に要人の護衛依頼が入った」
父さんは勿体振って言ったが、そんなところだろうとは思っていた。
僕の家系は、プロの護衛組織の一派。
国家権力なら銃という殺傷能力の高い武器が使えるが、一般人は持つことすら出来ない。
そこで僕達は銃を使わなくても、それと同様あるいはそれ以上の力で戦う事が出来るよう、特別な訓練を受けている。
「誰の警護をするの?」
「うむ、この娘だ」
父さんは一枚の写真を取り出し、僕に手渡した。
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