事情聴取

8/21
前へ
/220ページ
次へ
様子が少し違う。 動機があると言われたら確かに誰でも動揺するだろう。 だが、胡桃は頼人のやり方が良いと思わなかった。まるで尋問しているようで、これでは怖くて誰も正直に話すとは思えない。 ……やはり彼には何かが欠けている。 「いえ、山田さんの言った事が嘘だとは思えないので。」 「私が主人を殺したとでも言いたいんですかっ。」 突然机を叩いて頼人を睨む有紀子。 胡桃は彼女の豹変に驚いて萎縮した。 しかし、彼は眉一つ動かさず淡々と話す。 このような場面に慣れているとでも言いたげな顔。 「いいえ。ですが貴方が犯人ではないという確証はどこにもない。」 「違う、私はやっていない。 ……胡桃さん信じて……。」 「えっ……あ、はい……」 急に振られてどうすればいいのか迷ったが、とりあえず頷いてみた。 「信じてほしいのなら質問に答えてくれませんか。」 頼人に言われて有紀子は表情を暗くしたまま俯いた。何も話したくないと拒んでいるように見える。 すると、立川が尚も食い付こうとする彼を制止し、穏やかな声で諭す。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1769人が本棚に入れています
本棚に追加