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バシャ…
静まり返った公園に響く雨音にまじって聞こえた物音に目を向ける俺の虚ろな視界に雨や泥で汚れた足元が映り込む。
『…めんどくせぇ奴、』
もう走り出す気力もない俺は最後の抵抗に吐き捨てるように言い放った。
こっちはゼェゼェいって走ってきたってのに、息一つ乱れていないとか本当にムカつく奴。
捨てられた子犬のようにしょんぼりして俺の前に立つ藍沢が泣きそうな顔をしてる。
『なんつー顔してんの。』
見上げた俺からフッと自然に笑いが零れる。
ヨタヨタと今にも倒れそうなほど力ない藍沢が俺の足元にしゃがみ込む。コツンと俺の膝に藍沢の頭がくっつけられた。
『ごめんなさい。』
ポツリと藍沢から謝罪の言葉が零れて、俺は諦めたように瞳を閉じて藍沢が今から告げる言葉に耳を傾けた。
『月島…が無理して忘れたふりしてるのわかったし、俺もそうしたほうがいいことわかったけど。』
声が震えてる。
藍沢が泣いている。
誰のためでもせいでもなく俺が原因で。
熱いものがこみ上げてくる。出し切ったはずの涙がまた滲む。
『忘れて欲しくなかった。なかったことになんてできない俺。』
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