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耳を澄まし通話口から響く声に意識を集中する。
『もしもし、私メリーさん。今、大高駅にいるの』
「は?どちらさ--切れてるし」
最寄駅と自分の名前のみ残した通話を切ると、憮然とした表情で携帯をポケットへと戻す直弥が私の方を向いた瞬間、動きが止まる。
「ナオヤ」
「な、なにか?」
「今の電話の声は女だな、誰だ?」
「何でそんな怒ってんだよ!?」
怒る?私が?
自覚はないが直弥には私が怒っているように見えるらしい。
「いいからはきはき答えろナオヤ!!」
「知らないから!間違い電話だろ。だから人の身体をシェイクすんな!」
おっと、いつの間にか熱くなっていたらしい。
深呼吸して落ち着くと改めて直弥に詰め寄る。
「で、今の女は誰だ」
「知らないっつの。あの、本当ですんで首を撫でるのやめてもらえないでしょうか?」
どうやら嘘ではないらしいが、なんであれ私以外の女の影が直弥の傍でチラつくのは甚だしい。
いっそ隔離してしまおうか。
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