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悶々と考え込んでいると、いつの間にか携帯を取り出していじくっていた直弥が疑問
の声を上げる。
「非通知?」
「ん、どうした?」
不思議そうな顔をした直弥に、その理由を訊いてみるとどうやら先ほどの着信履歴を見ると発信者番号が非通知になっているそうだ。
非通知は着信拒否しているから本来着信音が鳴ることは
ないという。
納得いかない表情で携帯画面を眺めていたようだが、眠気がまた来たのか欠伸をする。
「そういえば、これありがとな」
「気にするな。当然の行いだ」
自分の体にかかったタオルケットを掲げて見せ、お礼を言う直弥に微笑んでみせる。
少し冷めてしまったが、持ったままだったココアも直弥は飲むと、また礼を言って目を閉じて寝息をたてはじめた。
他人の行いに礼儀をもって接するのは、直弥の美徳とするところだ。
もっとも--
プルルルルルルルルル
また鳴り始めた携帯に、目を覚ました直弥が明らかに不機嫌に対応する。
せっかくの休息をこうも邪魔されれば当たり前ではあるが。
「また非通知……もしもし?」
『私メリーさん、今、河又書店の前にいるの』
またこの女か!さっきの電話から十五分程しかたっていないというのに。
二度も邪魔をしておってからに、これではゆっくり直弥の寝顔を堪能出来ないではないか。
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