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もしこのメリーさんとやらに会ったあかつきには、相応の礼をしてやる必要があると息巻いていると直弥が声をかけてくる。
「メリーさん、近づいて来てるな」
「そう言われれば、河又書店は駅からこのマンションまでの通り道にあったな」
「だな。それに、メリーさんねぇ」
「なんだ、やはり知っているのか?」
「知っているといえばそうだけど、ある意味有名人だしな。--だから睨むなってば」
それから直弥はメリーさんにまつわる都市伝説を、時折欠伸をまじえて教えてくれた。
何度も何度もメリーさんなる存在からかかってくる電話は、毎回所在地を教えるもので、回数を重ねるごとに自分に迫ってくるらしく、最終的には背後を取られて刃物で切りつけられるそうだ。
「どこまで本当かはよく知らないけど」
「街中の怪異は人一人襲うのに、手間をかけるのだな」
なんとなしに感心していると、また着信音が鳴り渡る。
携帯画面にはまた非通知の表示、十中八九メリーさんだろう。
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