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「西の森にある泉には、伝説があるのよ」
広い室内は出入口とは反対側の壁ぎわに設置されている机と椅子だけの実に簡素なものだ。
蔦模様の刺繍が施された横手の壁には、上着をかけるフックしかない。
そうした中に一人の少女が室内に入るなり、そう言ってこぶしを握り締める。
ライトブラウンの長い巻き髪をたなびかせ、大きな瞳が特徴的なその少女はただの少女ではない。
とてもそうとは見えないのだが、一応これでもサウスパレス王国の姫君であり、いずれは王国を継ぐ身でもあるのだ。
だが、そうなるには彼女はまだまだ若くお転婆で、そのため今は王国を継ぐため勉強中の身でもある。
そんな少女が、部屋の主の次なる反応を待っているのか、こぶしを握り締めた態勢のまま動かずにいる。
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