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清廉な空気が漂う森の前、静かな雰囲気が僅かに揺れる。
森の前にある小道に光の渦が発生したかと思うと、その中から人影が現れる。
出てきたのは、漆黒のマントを羽織ってはいるが、軽装で腰に剣を指している彼と、栗色の巻き髪をたなびかせたティリスの姿だった。
光の渦は、彼らが完全に出てきたところで、小さな風を巻き起こしながら消え失せる。
それを確認している彼に対して、ティリスは呑気にも森を眺めながら瞳を輝かせて言った。
「やっぱり早いわ。カイルの疾風の道ってば、もう最高だわ。すぐ森に着けるなんて、嘘みたい」
一見誉められてはいるが、長年ティリスの我儘に付き合っている彼は騙されない。
呆れた様子で振り返ると、ため息混じりに返す。
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