もうひとつのぷろろーぐ

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…そういえば、昔も今みたいなことがあったような。 と、シシルはしみじみと昔の記憶を思い返してみる。 そもそも、今と変わらず昔からくぅは忙しなかった。 「――っと、こんなところで道草を食ってる場合じゃなかったんだ。行こう姉さまっ、お父さんとお母さんが待ってると思うから」 くぅはそう言うと、木々が生い茂る遥か彼方を指差す。 くぅが指差す向こうには、小さな集落がある。 その集落はまるで、どこかの古い時代で時が止まってしまったのでは、と思ってしまいそうなほど長閑で古い。 今の現代社会で育った者が見たのなら、思わず気後れしてしまいそうなくらいだろう。 事実、コンクリートジャングルを渡り歩いてきたばかりのシシルにとって、あの集落は落差が激しすぎる。
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