328人が本棚に入れています
本棚に追加
…そういえば、昔も今みたいなことがあったような。
と、シシルはしみじみと昔の記憶を思い返してみる。
そもそも、今と変わらず昔からくぅは忙しなかった。
「――っと、こんなところで道草を食ってる場合じゃなかったんだ。行こう姉さまっ、お父さんとお母さんが待ってると思うから」
くぅはそう言うと、木々が生い茂る遥か彼方を指差す。
くぅが指差す向こうには、小さな集落がある。
その集落はまるで、どこかの古い時代で時が止まってしまったのでは、と思ってしまいそうなほど長閑で古い。
今の現代社会で育った者が見たのなら、思わず気後れしてしまいそうなくらいだろう。
事実、コンクリートジャングルを渡り歩いてきたばかりのシシルにとって、あの集落は落差が激しすぎる。
最初のコメントを投稿しよう!