ぷろろーぐ

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――なーぉ。 全身真っ黒の毛で覆われた、どこかののらネコ。 しかしながら黒い毛は泥で汚れ、とてもだが全身真っ黒とは形容し難かった。 ネコは一声鳴くと、何かモノ欲しそうな瞳で、馴れ馴れしく俺の足に擦り寄って来る。 俺は、その行動を見て何となく理解した。 恐らく、腹が減っているのだろう。 気まぐれなネコがこうして擦り寄って来る時は、たいてい腹が減った時か、撫でて欲しい時くらいだ。 「……」 たぶん。 つい最近までの俺ならば、至極甘ったるいほどの手厚い歓迎をしたあとに、昨日の残飯をフルコースで与えていたことだろう。 そんな光景が、まるで走馬灯のように極めて鮮明に浮かび上がる。 同時に、虫酸が走る。 馬鹿馬鹿しくて、苦笑すら浮かんでこない。 そもそも、 「…汚い体で寄ってくんなっ」 今は、違う。 偽善に満ち溢れた甘ったるい男でもなければ、血の通わない冷酷非道な男でもない。 俺は、俺だ。 何にも左右されることのない。 俺の生きたいように生きる、ありのままの俺だ…。
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