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――なーぉ。
足蹴にされたにも関わらず、退けることなく俺に擦り寄るのらネコ。
さらに、何かを懇願するような視線を浴びせてくる。
…それほどまでに、腹が減っているのだろうか。
「朝っぱらから、なんだってんだ…?」
俺はため息をひとつすると、おもむろにその場にしゃがみ込む。
「……お前さ、シシルってネコ知ってるか?
白い毛のヤツなんだけど」
俺は、何を思ったのだろう。
気がつけば、のらネコにそんなことを聞いていた。
当然ながら、のらネコがその問いに返答してくれるわけがなく。
無言の時間が、ゆっくりと過ぎる。
ネコは、きょとんとした眼差しをひたすらにこちらへ向けていた。
―――シシル。
颯爽と目の前に現れたかと思えば、颯爽と去って行った、まるで突風のようなネコの名前だ。
思い返せば、何ともはた迷惑なヤツだった。
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