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「玄関の前にいたんだよ、コイツ」
依然として離れないのらネコを指差す。
恐らく、死にそうなほど腹が減っているに違いない。
「そっかぁー……会いたいなぁ、シシルちゃんに。
お兄ちゃんも、会いたいよね?」
ため息混じりに、しみじみと吐き出される言葉。
ネコに視線を落とし、ね、と次にこちらの様子を伺うような表情の天下。
「ばッ…!!」
俺は、勢い良く身を翻す。
何故そうしたのかは、わからない。
ただ、そうしたかったからだろうか。
あるいは。
「バカ言うなよ!
あんなはた迷惑なヤツなんて、俺はごめんだぜ!
正直言って、もう二度と会いたくないね」
…あるいは、ほのかな赤に染まるこの頬を見られたくないから?
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