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「お兄ちゃんってば、素直じゃないなぁ…」
本当は会いたいくせに、などと言いつつ、天下はのらネコをいじり始める。
のらネコは極めて人懐っこい性格らしく、ごろんと地面の上に腹を見せて寝転がる。
「す、素直じゃないってどういう意味だよっ…!?」
「どうって、そういう意味。
シシルちゃんは、お兄ちゃんのことかなり気に入ってたみたいだけど?」
ざわっ、と涼やかな風が木々や葉を揺らす。
俺や、天下の髪の毛も揺らす。
「は、早く学校に行かないと遅刻するぜ!?」
「あ、逃げた」
天下はジト目で、不満そうな表情をこちらに向ける。
しかし、俺は無視した!
「…っと、その前に。
家に食パンあったよな?」
「あるけど、どうかした?」
ん、と天下は不思議そうに首を傾げさせる。
「コイツにやるんだよ、腹空かせてるみたいだから」
――…俺は、俺の生きたいように生きる。
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