学年別トーナメント

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カインは自分の席である窓際の一番前の椅子を引く。 その間、彼に挨拶するものはいなく横目で見送るのみであった。 「おはよう」 それから間もなく女性にしてはやや低い声が教室に聞こえた。 生徒達はこぞって挨拶を返すと、その女性は満足気に頷き教卓の前に立つ。 薄い緑色の前髪を払うと、縁のない眼鏡の奥から教室を見渡す。 が、すぐに一点で視線は止まる。 「…………」 そうカインを色を持った目で凝視していた。 毎朝の事なので誰も何も言わない。 美しい女性――フラウール・ガウンディである。 白いワイシャツにスラックス、その緑の髪は上で巻かれ前髪は少し垂らす。 すっと流れるような顎と鼻は完成された女性の顔つきであり、さらに掛けている眼鏡が知的さと色気を同時に醸し出していた。
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