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そのことについては前々から知らされていたのだろう、生徒達に動揺はなかった。
しかし、皆の緊張が高まっていた。
この国の代表となって戦う、どれほど名誉なことか。
「それでは皆の健闘を祈る。がんばれ」
フラウールがそう言うとばらばらと生徒達が立ち上がる。
学年別トーナメントは外の校庭と中の大訓練所に別れるため、移動を開始したのだろう。
「カイン!」
移動を開始しようとしたカインを呼び止める声。
「カインは外か?」
「はい」
そう笑顔で答えてくるカイン。
そうやって会話をしていると、ついつい一年前を思い出す。
(カイン、無理するな……か)
去年フラウールがカインに投げ掛けた言葉。
魔法が使えないというだけで勝手に勝敗を判断してしまっていた。
フラウールは人差し指で眼鏡を上げる。
「カイン。がんばってこい」
カインは頷いた。
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